
分節運動のエクササイズとそのメリットについて
ボクノジム高円寺店代表トレーナーのそうです!
いきなりですが、分節運動について解説します。
「分節運動(ぶんせつうんどう)」とは、身体の各部位――特に脊柱を構成する椎骨1つ1つを独立して動かすような精密な運動を指します。
日常生活の動作やスポーツ、さらには正しい姿勢の維持においても、この分節的な動きの可否は大きな意味を持ちます。
この記事では、分節運動に関わる筋肉・神経系の仕組みをもとに、エクササイズとして取り入れるメリットを解説します。
多裂筋と分節的安定性
多裂筋(たれつきん)は、脊柱を安定させるうえで中心的な役割を果たす深層筋(インナーマッスル)の1つです。
この筋肉は、椎骨1つ1つに直接付着しており、主に脊柱の回旋や伸展、側屈などの微細な動きを制御します。
機能解剖学的に見ると、多裂筋は以下のような特徴があります
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C2〜仙骨(S5)まで存在する
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椎骨間をまたいで、2〜4個の椎骨を連結
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持続的な低強度の収縮をすることで、姿勢を支える
このように、分節運動が可能な状態を保つためには、多裂筋の活性が不可欠です。
とくに深層の多裂筋は、慢性腰痛のある人で筋厚の減少や遅れた収縮タイミングが報告されており、これを改善する目的で分節的な運動が推奨されます。
回旋筋群とコントロール力
回旋筋とは、脊柱や体幹を左右に回す際に働く筋肉群を指します。主に以下のような筋が含まれます
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内腹斜筋・外腹斜筋
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脊柱起立筋の一部(最長筋・腸肋筋など)
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多裂筋や回旋筋
これらの筋は、体幹の回旋運動だけでなく、姿勢の安定やバランス保持にも関与しています。
特に、歩行時には体幹が左右に軽く回旋しますが、これは骨盤と胸郭の回旋運動が逆方向に動くことでバランスをとっている現象です。
このような交互回旋運動を正しく行うためには、分節ごとの筋活動が精密にコントロールされている必要があります。
歩行における分節運動の役割
歩行は単なる足の運びではなく、全身の協調運動です。
とくに体幹においては、
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骨盤が一方に回旋する
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胸郭が逆方向に回旋する
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頸部や頭部を安定に保つ
といった「反対方向の回旋の連動(カウンター・ローテーション)」が自然に起こっています。
この際、脊柱の各セグメントが連鎖的に屈曲・回旋・伸展・側屈を行うことで、全体として滑らかで効率的な動作となります。
このとき、分節的な運動が十分に行えない状態では、特定の部位に過剰なストレスが集中し、痛みや機能不全のリスクが高まります。
特に腰椎・胸椎移行部や、胸椎・頸椎移行部は、回旋の動きが強調されやすく、分節運動の低下は痛みと関係することがあります。
反射的な姿勢制御と分節運動
人間の姿勢制御は、中枢神経系によって常に“無意識的に”行われているものです。
これには以下のような神経回路が関与しています:
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反射:筋紡錘・腱器官を介したフィードバック機構
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小脳:動作の調整と誤差修正
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脳幹網様体(姿勢制御中枢):抗重力筋のトーン調整
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前庭覚:重力方向の検出と頭位調整、外側前庭脊髄路による抗重力筋の活性
このような反射的・無意識的な制御においても、分節運動は非常に重要な役割を果たします。
なぜなら、分節ごとの可動性と筋出力が整っていないと、反射的な制御がうまく機能せず、代償運動が起きやすくなるためです。
結果として、首や腰など一部の関節に過剰な負荷がかかり、痛みや機能障害の原因になります。
分節運動を高めるためのエクササイズの具体例
以下のようなエクササイズは、多裂筋や回旋筋の促通、および分節的な可動性の向上に効果があるとされています。
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キャット&カウ(背骨の屈伸):脊柱の分節的な動きを感じながら行う
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胸椎ローテーションエクササイズ:各臥位での体幹回旋
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スパインシリーズ(ピラティス):骨盤・腰椎・胸椎・頸椎の順序的な動き
これらの運動は、力を入れるというより「どこをどう動かすかを丁寧に感じる」ことが重要です。
まとめ
分節運動とは、体を1つ1つのユニットで正確に動かす能力です。
これを高めることで、多裂筋や回旋筋といった深層筋の機能が引き出され、歩行や姿勢制御の質が向上します。
また、反射的な神経制御の正確さを高めるためにも、分節的な運動の質は重要です。
日常生活での痛みの予防・改善、歩行の質の向上、姿勢の安定を目指す方にとって、分節運動を意識したエクササイズは非常に有効な選択肢となります。
歩行に関するエクササイズをしているのに中々変わらないと感じている方はぜひ分節運動を取り入れてみてください!
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